堂くん、言わないで。
「どーやら俺は、その強さにあてられちゃったみたい」
棗くんは照れたように頬をかきながら笑った。
人なつっこい笑みから、垂れた目尻から視線をそらせない。
「だから俺と付き合ってほしい」
いつのまにか、また真剣な表情に戻っていた棗くん。
わたしなんかよりもずっと強いと思った。
こうして自分の気持ちを言葉にできる棗くんが羨ましくて、眩しくて。
わたしはドレスの胸のあたりをぎゅっと握りしめる。
しわになるかもなんて考える余裕はなかった。
「わ、たしは……」
とっさに浮かんだのは、あの人の姿。
だけど感情だけが思考に追いついてこない。
「他に好きな人がいるの?」
まるでその人が誰だか知っているみたいな口ぶり。
棗くんの問いかけに、首をよこにふるので精いっぱい。
「じゃー俺にも望みはあるってことでいい?」
「え、と……」