堂くん、言わないで。
「ちょっとはあいつだけじゃなくて、俺のことも見てよ」
小さく落とされた声。
わたしは頭を巡らしながら、ぐるぐると廻る世界で立ちすくんでいた。
このまま自分の気持ちに気づいてしまう前に、蓋をしたほうがいいのかもしれない。
こんなこと言っている時点で、自覚しているようなものだ。
だけど、それでも。
こうやって自分に言い聞かせてでも、押しこむべきだと思ったし、わたしはきっとそうしないといけない。
……最初から望みのない恋愛をするよりも。
こうしてわたしのことを好きだと言ってくれる人を、わたしも好きになるほうが幸せなのかも。
「返事はいつでもいいから」
「……うん」
はたしてこの選択が正しかったか、なんて。
どれだけ考えてもわからなかった。