堂くん、言わないで。
そして文化祭当日。
お伽噺カフェは想像以上の大盛況をみせた。
たくさん注文が入るのはやっぱり白雪姫や美女と野獣などのよく知られた物語で。
だけどいちばん人気だったのは、シンデレラだった。
カボチャのケーキが、というより棗くんが大人気で。
指名を受けるたびにわたしはガラスの靴を履いて、お客さんの前にあわてて飛びだしていった。
ケーキをテーブルの上に置いて、時間に追われているように急いで走り出し、靴を落とす。
それを拾うべく棗くんが現れたところでカフェ内は黄色い悲鳴に包まれた。
す、すごい人気……!
なるべく目立たないように最後まで演じ終え、裏方に戻る。
午前のシフトはこれで終わりだった。
「お疲れさんふたりとも」
ねぎらってくれたのは裏方の男の子。
棗くんを見て、それからわたしを見て。なにやら悟ったような笑みを浮かべる。
「せっかくだし、そのままふたりで休憩行ってこいよー。客寄せにもなるしな!」
「え!でも、」
棗くん、疲れてるんじゃ?
わたしはそういう意味も込めて棗くんを見あげたけど。