堂くん、言わないで。
「じゃあお言葉に甘えて」
するりと自然な動作で指を絡められる。
びっくりして固まるわたしの肩を、棗くんはやさしく抱き寄せた。
「行きましょうか。お姫さま?」
裏方にしんと広がる静寂。
数秒間、沈黙が落ちたのち────
「やばい。鼻血でそう」
「自分に置き換えちゃった」
「あたしもやったから大丈夫」
ざわめき、色めく女の子たち。
ひゅう、とどこからか口笛も吹かれた。
そうしてわたしは棗くんにエスコートされながら、教室をあとにしたのだった。