堂くん、言わないで。
「みくるちゃん、緊張してるね」
「えっしてな、……してないよ?」
ペットボトルの水を飲んでいたわたしはごくんと喉を鳴らす。
変なところに水が入ったのかすこしむせてしまった。
「こうして歩いてると、夏祭りを思い出すなぁ」
棗くんの言葉にわたしもたしかにとうなずく。
あのときは楽しかった。
もちろんいまも楽しいけど、以前とはどこか違う感情をわたしは持っていた。
棗くんのいうように、緊張しているのかもしれない。
あのときとはわけが違っていて、わたしは棗くんを異性として見る必要があった。
ちゃんと意識しなきゃ……
キスされたときとはまた別のどきどきが胸を支配する。
「みくるちゃん」
「どうしたの?」
「いま、一緒にいるのは俺だよね」
静かで、はっきりとした。
だけどすこしもの悲しげな口調だった。
その問いかけに、わたしはハッとする。