堂くん、言わないで。
「みくるちゃん。こっち見て」
たぶん同じものを目にしたんだろう。
ゆるりと棗くんのほうを見ると、なぜか悲しい顔をされた。
そのままちょっと歩いて、人のいないところまで連れていかれる。
「完全に気づいちゃったみたいだね」
「……ごめんなさい」
「そのごめんは、どういう意味?」
わたしはちゃんと棗くんに向き直って、頭をさげた。
「わたし、なつめくんとは付き合えない。なつめくんの気持ちには応えられない」
「これからも?」
「……うん。一生」
「それけっこう心にくるなぁ」
胸を押さえるようにして、眉をさげて笑ってみせた棗くん。
それが心からの笑顔でないことくらいわたしにもわかった。
「あいつのこと好きなの」
「……うん」
「でも、さっきの見たでしょ?」
ゆっくりとうなずく。
彼女とはかぎらない。
だけどどこまでも親密で、女の子の堂くんに送る視線はまぎれもなく“恋”だった。
そう、自分と同じ。