堂くん、言わないで。
「……そんな顔して言われちゃ、もうなんも言えねーって」
ずるいなぁ、みくるちゃんは。
やっと、ふっと肩の力をぬいて笑ってみせた棗くんは。
愛おしむようにわたしの額にキスを落とした。
いきなりのことで反応できなかったわたしは、あわてて額を押さえる。
「ガラスの靴。俺が履かせてあげたかったな」
ごめんね、と言いかけて顔をあげる。
わたしを好きになってくれてありがとう。
そう言うと、棗くんは不意を突かれたように目を瞬かせてから、ほほ笑み。
どういたしまして。
と、王子さまのようにお辞儀をしてくれたのだった。