堂くん、言わないで。
チェックメイトに口づける。
*
翌週、ひさしぶりになゆちゃんと会うことができた。
遠くの高校に通っているなゆちゃんは、電車で1時間半ほどかかるところに住んでいるから、そう気軽に会うことはできない。
数週間ぶりにお互いの都合があって顔を合わせたなゆちゃんは、さらに美人になっていてわたしを驚かせた。
「みくる~お昼なにがいい?」
「んーと、小籠包たべたい」
「じゃあ台湾料理だ!」
いいお店を知っている、と連れてきてもらった台湾料理屋。
そこの屋外テーブル席に案内されたわたしは、正面に座るなゆちゃんのにこにこ笑いを無視できなかった。
「なに、どうしたの……?」
「みくるがお昼なんでもいいって言わなかったこと、ひしひしと噛みしめてる」
なんの話か一瞬わからなかった。
そしてすぐに、なゆちゃんの言葉の意味を理解する。
「成長したね、みくる」
「なゆちゃん……ありがとう」
なんだか嬉しくって、目の奥が熱くなる。
だけど手放しで喜べない自分もいた。
自分でも、前よりは変われたかなと思う。
けど根本的なところはまだ、以前のままのような気がしてならない。