堂くん、言わないで。


がたんとテーブルに手をついてしまい、グラスに入っていたオレンジ色の液体がゆれる。

びっくりしているなゆちゃんに、はっと我に返ってごめんと謝った。



「でも……だめ、なの。どうしても言えない」

「恥ずかしいから?」


わたしは首を横にふる。


恥ずかしい気持ちがないと言ったら嘘になるけど、それが言えない原因ではなかった。

もっと別の重要なことが、わたしの口を言っちゃだめだよ、と両手で押しつける。


いまの関係が終わるくらいなら。

堂くんの傍にいられなくなるくらいなら、言わないほうがマシだった。


……いまは、まだ。


くるしいという気持ちは日に日に膨らんでいってるけど、まだ、我慢できる。



なにも言えないでいるとなゆちゃんが察したように長い息を吐いた。



「もし、相手の気持ちがわからなくて遠慮してるんだったら。それなら、どれだけ悩んでも他人の気持ちなんてわからないからね。だったら自分で……みくるが動くしかないよ。そこんとこ、解ってる?」


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