堂くん、言わないで。
「……うん」
「そのフクザツな顔から見るに、どーやら違うみたいだけどね」
なゆちゃんはくすりと笑ったあとグラスを呷る。
「この恋愛マスターなゆちゃんがひとつ、アドバイスをしてしんぜよう」
「アドバイス?」
「そう。アドヴァイス」
巻き舌ふうに言ったあと、ウインクしながら人差し指を立ててみせた。
中学のとき何度も目にした、自信に満ちあふれた通称なゆちゃんスマイル。
わたし、なゆちゃんのこの顔好きだなぁ……
なんて思っているわたしを知ってか知らずか。
なゆちゃんはコソコソ話をするように、ずい、と顔を近づけてきた。
「それはね────……」