堂くん、言わないで。






なゆちゃんのアドバイスがずっと頭のなかにあった。


だけどそれを“たしかめる”ことができないまま、もうはや1週間。



放課後。いつものように図書室で本を選んでいるときだった。




「あっ!い"っ」



────ドンッ、と。


手がすべって、なにか分厚い全集のようなものが足の上に落ちてきた。


すぐに足を押さえてしゃがむ。



「ドジ」

「っ、~~……!」


堂くんの声にも反応できない。痛みで言葉も出ない。


さすがに心配してくれたんだろう。

空気が動く気配がして、気がつくと堂くんがすぐ傍まで来てくれていた。



「どこ?」

「小指。いたい……」

「骨いったか」

「や、わかんない……」


わたしは上履きの上から小指を圧してみる。

たぶん折れてはいない。


痛いけど、たぶん大丈夫だ。


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