堂くん、言わないで。
*
なゆちゃんのアドバイスがずっと頭のなかにあった。
だけどそれを“たしかめる”ことができないまま、もうはや1週間。
放課後。いつものように図書室で本を選んでいるときだった。
「あっ!い"っ」
────ドンッ、と。
手がすべって、なにか分厚い全集のようなものが足の上に落ちてきた。
すぐに足を押さえてしゃがむ。
「ドジ」
「っ、~~……!」
堂くんの声にも反応できない。痛みで言葉も出ない。
さすがに心配してくれたんだろう。
空気が動く気配がして、気がつくと堂くんがすぐ傍まで来てくれていた。
「どこ?」
「小指。いたい……」
「骨いったか」
「や、わかんない……」
わたしは上履きの上から小指を圧してみる。
たぶん折れてはいない。
痛いけど、たぶん大丈夫だ。