堂くん、言わないで。


ぜんぜん慣れない。

口の中がすごく熱い。



角度を変えて啄むように何度か触れたあと、堂くんは離れていった。


でもそれは一瞬。

いままで氷に触れていたような手が、わたしの唇をなぞる。



「口、あけて」


ふるふる、首をふった。


これ以上はだめだと、本気で思ったから。


なのに堂くんはわたしの唇を指でむりやりこじ開ける。



「ん、ぅ……ぁ」


冷たくて、熱くて。

────とびきり甘くて。



意識がとびそうになった。


蹂躙される口内に神経がぜんぶ集中した。


身体の支えが効かなくなって、堂くんの腕にもたれかかってしまう。


目の前がチカチカする。

じんわりと涙がにじんでくる。


これも生理現象?


なんの涙?


わからない。



ぜんぶ、わからなかった。


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