堂くん、言わないで。
もう一度やり直そうと言われたとき、すでに6年の月日が経っていた。
6年ぶりに会った父はまったくと言っていいほど変わっていなかった。
むしろ最後に見たときより若々しくなっているような。
となりには女がいた。父の横にちいさく座っている女は、そんな父よりもすこし若く見えた。
「ねーおれパフェ頼んでいい?」
「……遼花」
無駄にあっけらかんとしている遼花に、俺は我慢しろと目で制した。どう考えてもそういう空気じゃないだろ。
すると父が相好を崩して、メニューをこちらに寄越してきた。
「いい。ふたりとも好きなものを頼みなさい」
俺はなにも頼む気になれず、結局注文をとったのは遼花だけだった。パフェだけでなく、ハンバーグとライスまで。
いままで部活をしていたから腹が減っているだろう、と。
なぜそんなことまで把握しているのかわからなかったが、とにかく父は学校帰りに俺たちをこじんまりとした喫茶店に呼び出したのだ。
「じつは再婚することにしたんだ」
その物言いは家族に対するそれのようで。
6年という空白の時間をまるで無視してきたことに、少なからず俺は驚いていた。