堂くん、言わないで。


「しょうがないから門のとこまで一緒に行ってあげるよ」

「え、えー……でも、だって、部活は?今日は休みなの?」

「体育館に点検入るから使えないんだよねー」

「そうなんだ。じゃあひさしぶりの自由な放課後じゃない?」

「え、なに?どっか行きたい?デートでもする?」

「デートなんかしないよ」


わたしはマフラーを首に巻きながら答えた。


あと1週間もすれば冬休み。

きっと今年中に脱ぼっちをすることはできない。


でもまあ、このままでもいいかもなぁ……なんて、最近は思い始めた。


だれかに気を遣わなくていいのが、あんがい楽だし。


一日中だれにも話しかけられないというわけでもない。

用事があればみんな話しかけてくれるし、そのときにちょっとした雑談もできる。


こうして棗くんも気兼ねなくわたしに話しかけてくれるし、いまのわたしにはこれで充分なのかもしれなかった。


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