堂くん、言わないで。
そのまま、つうっと唇をなぞられ、熱を奪うように親指をぐっと押しつけられた。
「お前がいないと、……困る」
感情がこもっているわけではない。
淡々とした物言いなのに、そのセリフはわたしの心の中にすうっと染みこんできた。
触れられている部分から、甘い痺れがじんわりと伝わってくる。
わたしを必要としてくれる人なんて、いないと思っていた。
こうして待ってくれている人は堂くんが初めてだった。
うれしかった。
理由はどうであれ、堂くんはわたしを待っていてくれて────その事実がうれしかったんだ。
「……いいよ」
そっと、堂くんのほおに手を伸ばす。
わたしのとは違う、底冷えした肌。
「わたし、堂くんのカイロになってもいいよ」