堂くん、言わないで。
わたしも前までは同じ反応をしていたし(どちらかといえば後者)、いまも正直まだ怖いと思う瞬間はある。
だけど────
「聞いた?この前、堂恭花がケンカしてたらしいよ」
「えっなにそれ!どこ情報?」
お昼やすみ。
とつぜん出てきた堂くんの話に飲んでいたミルクティーでむせかける。
ルナちゃんたちは咳きこむわたしなんてなんのその。
そのまま大スクープを仲間内で打ち明けるように、こしょこしょといっそう小さな声になった。
「歓楽街で2組の女子が見かけたんだって。なんでもイケメンに突っかかってたらしいよ。金がどうとか死がどうとか、話してたっぽい」
「え、死?」
ルナちゃんが気味悪がるように眉をひそめる。
わたしもそこは気になった。
耳をそばだてるように上半身を乗りだす。
「そう。“死ね”だか、“死んだ”だか、そんなことを一方的に言ってたんだって」
「えっこわー!やっぱ堂恭花ってあっち側の人間なのかな」
「あたしらの知らないところでドンパチやってたり?」
きゃあ~とみんなが示し合わせたように悲鳴をあげた。