堂くん、言わないで。
「寒い」
「いたっ……堂くん、いたい……っ」
ぐっと握られている手はどんどん強くなっていく。
わたしはとうとう堪えきれなくなって、声を漏らしてしまった。
堂くんがはっとして、わたしの手を離す。
それと同時に、ぴたりと足も止まった。
「……悪い。痛かった?」
「ん……いや、大丈夫…」
なんだか素直に謝られてしまうと調子が狂う。
手をさすっていると、その上にそっと手を重ねられる。
さっきまでとはちがう気遣うようなつめたい手が、わたしを導くように誰もいない教室まで連れていく。
「なんで泣いてたの」
「あ……ううん。なんでもない」
入った瞬間、そう聞かれた。
だけど個人的なことだし、わざわざ言う必要もないと思った。
あ、でも……堂くんがなにか勘違いしてるなら、弁解したほうがいいかも。
ぼんやりそう思っていたときだった。
わたしが壁に押しやられたのは。