堂くん、言わないで。
廊下を走りながら、わたしの頭はぐるぐるぐるぐる。
そっちか。
そっちなのか、堂くん。
てっきり苗字で呼ばれると思ってたから、不意打ちをくらった。
堂くんの口から紡がれる“みくる”に。
胸をぎゅうぅっとしぼられたみたいになる。
ぎゅっ、ぎゅって。
何度も、何度も。
「落ち着け、落ち着けわたし……!」
ドキドキしていい相手じゃない。
ときめいていい相手じゃない。
自分に言い聞かせるようにしながら、わたしは教室までの道のりを駆け抜けた。