堂くん、言わないで。
「……安藤みくる」
ぼんやりと頭に浮かんだその顔を、名前をなぞるように口にする。
一緒にいると落ち着く存在だった。
逆に、近くにいないと落ち着かない。
一度知ってしまったぬくもりは、そう簡単に忘れることはできない。
どこにいるのか、いまなにをしているのかと。
ふとした瞬間に考えてしまう。
いまも、こうして……
「…………寝よ」
考えないようにした。
俺はあいつのことを好きでもなんでもない。
それだけはたしかだった。
…………たぶん。