堂くん、言わないで。
今度は一瞬じゃなくて、すこし長いあいだ塞がれる。
こちらを見つめる夜明けのような瞳にわたしの顔が映りこんでいた。
目が離せなくて、どうしたらいいかもわからなくて……
いつのまにか床に座りこんでいたわたし。
唇を離されるとき、ついでに頭の後ろをさらりと撫でられて。
堂くんはそのままなにも言わずに、落ちてきた本を片付けだした。
触れられた唇、そして後頭部に手を持っていく。
頭にはそこそこ大きいたんこぶができていた。
意識したとたん、じわりと熱を帯びていく後頭部。
痛い?
ううん、……熱い。
堂くんに塞がれた唇が、甘く、熱を帯びていた。
背中越しに窓から降りそそぐ太陽の光が堂くんを照らす。
その後ろ姿からはなんの感情も読み取れなかった。
ん?
なんでいま、キスし直された?
…………ん?
そうして夏休みになった。