堂くん、言わないで。
吐き捨てるような響きに、そして向けられた瞳に。
わたしの心はどんっと木槌で殴られたようになる。
だけど堂くんは追い打ちをかけるように言った。
「お前を見てると……イライラする」
さっきからお前、お前って。
わたしのことみくるって呼んでくれたじゃん。
あの頃のことがもうずっと昔のことのように感じる。
ぐしゃりと空いた手で髪を乱す堂くんには、なぜか余裕がなさそうに見えた。
そのことを本人もわかっていて、それに動揺しているようにも。
いつもだったら、他の人だったら、わたしも素直に「ごめんね」って謝ってる。
笑ってごめんねって言える。
だけど堂くんには……
堂くんだけには、そんなこと言われたくなくて。
「じゃあ手、離してよ」
気づいたら泣きそうな、情けない声をふりしぼっていた。