交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
あいかわらず、いや、さっきよりずっと距離が近くて、頬が熱くなる。それなのに私はわれを忘れてしばらく長瀬さんに見惚れてしまった。
やっぱりとんでもなく美形だけれど、それだけじゃない。
力強く、それでいて穏やかな瞳。彼の視線はどうしてこんなにまっすぐなのだろう?
これ以上ないくらい動揺しているのに、なぜだか不思議になつかしくて、いつまでも彼を見つめていたくなる。
すると、改めて「みずほさん」と声をかけられた。
「あ!」
そうだ。さっき長瀬さんから何か変なことを言われたんだっけ。
だが、この体勢ではまともに話などできそうにない。私は無理やり彼から視線をそらした。
「あの、契約……延長って、おっしゃいましたか?」
「そうです」
「でも、結婚式は終わったんですよ。おかげで私は恥をかかなくて済んだし、長瀬さんのおじいさまも喜ばれたんですよね。ピクルスの世話だってもう――」
「ああ、そうですね。みずほさんのおかげで、ピクルスもとても元気そうだ。さっきから気づいていましたよ」
長瀬さんは満足そうに頷くと、「だから更新したいんです」と笑った。
「は?」
「せっかく知り合えたんだから、このままもう少し続けてみませんか? せめてひと月」
「……ひと月?」
「それでも嫌だったら、すぐに離婚すればいい」
「離婚って……私たち、まだ婚姻届けを出していませんけど」
「そうでしたね。でも、みずほさんの会社はご実家より、ここからの方が近いでしょう? それに僕たちは仲よくなれると思うんです」
やっぱりとんでもなく美形だけれど、それだけじゃない。
力強く、それでいて穏やかな瞳。彼の視線はどうしてこんなにまっすぐなのだろう?
これ以上ないくらい動揺しているのに、なぜだか不思議になつかしくて、いつまでも彼を見つめていたくなる。
すると、改めて「みずほさん」と声をかけられた。
「あ!」
そうだ。さっき長瀬さんから何か変なことを言われたんだっけ。
だが、この体勢ではまともに話などできそうにない。私は無理やり彼から視線をそらした。
「あの、契約……延長って、おっしゃいましたか?」
「そうです」
「でも、結婚式は終わったんですよ。おかげで私は恥をかかなくて済んだし、長瀬さんのおじいさまも喜ばれたんですよね。ピクルスの世話だってもう――」
「ああ、そうですね。みずほさんのおかげで、ピクルスもとても元気そうだ。さっきから気づいていましたよ」
長瀬さんは満足そうに頷くと、「だから更新したいんです」と笑った。
「は?」
「せっかく知り合えたんだから、このままもう少し続けてみませんか? せめてひと月」
「……ひと月?」
「それでも嫌だったら、すぐに離婚すればいい」
「離婚って……私たち、まだ婚姻届けを出していませんけど」
「そうでしたね。でも、みずほさんの会社はご実家より、ここからの方が近いでしょう? それに僕たちは仲よくなれると思うんです」