交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
長瀬さんは優しいし、本物のセレブだけど、私は彼のことを何も知らない。圭介さんとの件もうやむやなままなのに、結婚生活を続けるなんてありえない。
第一、私は小さいころから用心深くて計画的で、ハプニングを避けて生きてきたのだ。もう無謀なことはやめて、もとの自分に戻らなければ。
「やっぱり……更新はご遠慮したいと思います」
「せめて、ひと晩考えていただけませんか? みずほさんがここにいても、俺はこの段階では妙なことは絶対しませんから」
「な、長瀬さん!」
長瀬さんはやはり手強かった。しかも私の懸念についても察しがついていたらしい。
思わず頬が熱くなったが、一方で率直な態度には好感がもてた。それに今から家に帰っても両親は寝ているだろうから、起こすのは気の毒だ。
「でしたら今夜だけお世話になりますけど……明日になっても気持ちは変わらないと思います。私、友人たちから『石橋を叩いて結局渡らない女』って言われてますから」
すると長瀬さんは私の顔から手を離し、声を上げて笑い出した。それも私が決まり悪くなってしまうくらいおかしそうに。
「そんなに笑わなくても」
「いや、失礼」
長瀬さんは笑いをかみ殺しながら表情を改め、握手を求めるように右の手を差し出してきた。
「橋なんて無理に渡らなくてもいいと思うけど、そうしないといけない場合は手伝います」
「えっ?」
「その時は、俺と手をつないで渡りましょう」
「ありがとう……ございます」
長瀬さんがそのまま動こうとしないので、私は当惑しながら彼の手を握り返した。
第一、私は小さいころから用心深くて計画的で、ハプニングを避けて生きてきたのだ。もう無謀なことはやめて、もとの自分に戻らなければ。
「やっぱり……更新はご遠慮したいと思います」
「せめて、ひと晩考えていただけませんか? みずほさんがここにいても、俺はこの段階では妙なことは絶対しませんから」
「な、長瀬さん!」
長瀬さんはやはり手強かった。しかも私の懸念についても察しがついていたらしい。
思わず頬が熱くなったが、一方で率直な態度には好感がもてた。それに今から家に帰っても両親は寝ているだろうから、起こすのは気の毒だ。
「でしたら今夜だけお世話になりますけど……明日になっても気持ちは変わらないと思います。私、友人たちから『石橋を叩いて結局渡らない女』って言われてますから」
すると長瀬さんは私の顔から手を離し、声を上げて笑い出した。それも私が決まり悪くなってしまうくらいおかしそうに。
「そんなに笑わなくても」
「いや、失礼」
長瀬さんは笑いをかみ殺しながら表情を改め、握手を求めるように右の手を差し出してきた。
「橋なんて無理に渡らなくてもいいと思うけど、そうしないといけない場合は手伝います」
「えっ?」
「その時は、俺と手をつないで渡りましょう」
「ありがとう……ございます」
長瀬さんがそのまま動こうとしないので、私は当惑しながら彼の手を握り返した。