交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
(なんで? どういうことなの?)
状況を受け入れられず、私は椅子の背につかまって立ち上がる。だが重くてかさばるドレスと華奢なハイヒールと長いヴェールのせいで、大きくよろけてしまった。
「まあ、みずほちゃん。だめよ! そのまま座っていらっしゃい」
母が大げさな悲鳴を上げたが、そのままドアの方へと向かう。
だって圭介さんは人生を着実に歩いていけるように、検討に検討を重ねて選んだ相手だったのだから。
私は立ち止まって、目を閉じた。一から十五までゆっくり数え、大きく息を吐く。
どうしていいかわからなくなった時は、いつもそうやって自分を取り戻してきた。そしてたいていそれはうまくいったのに、今回ばかりは全然だめだった。
いくら深呼吸を繰り返しても、頭の中は真っ白なままで、何も考えられない。
「お父さんは?」
「あちらのお父様やホテルの方と話しているところよ。どうするか方針が決まったら教えるからって――あ、みずほちゃん! どこへ行くの?」
私はふらつきながらも、外へ出ようとした。
ドレス姿の花嫁が不用意に歩き回れば、妙に思われるだろう。それでも、じっとしてなんかいられない。
「ちゃんと話を聞いてくるの」
「でも話って、誰に?」
「すぐ戻るから、お母さんはここで待ってて」
状況を受け入れられず、私は椅子の背につかまって立ち上がる。だが重くてかさばるドレスと華奢なハイヒールと長いヴェールのせいで、大きくよろけてしまった。
「まあ、みずほちゃん。だめよ! そのまま座っていらっしゃい」
母が大げさな悲鳴を上げたが、そのままドアの方へと向かう。
だって圭介さんは人生を着実に歩いていけるように、検討に検討を重ねて選んだ相手だったのだから。
私は立ち止まって、目を閉じた。一から十五までゆっくり数え、大きく息を吐く。
どうしていいかわからなくなった時は、いつもそうやって自分を取り戻してきた。そしてたいていそれはうまくいったのに、今回ばかりは全然だめだった。
いくら深呼吸を繰り返しても、頭の中は真っ白なままで、何も考えられない。
「お父さんは?」
「あちらのお父様やホテルの方と話しているところよ。どうするか方針が決まったら教えるからって――あ、みずほちゃん! どこへ行くの?」
私はふらつきながらも、外へ出ようとした。
ドレス姿の花嫁が不用意に歩き回れば、妙に思われるだろう。それでも、じっとしてなんかいられない。
「ちゃんと話を聞いてくるの」
「でも話って、誰に?」
「すぐ戻るから、お母さんはここで待ってて」