交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
やっぱり佐藤さんとおしゃべりすると、気持ちが落ち着くみたいだ。次も休憩が一緒になるといいなと思いながら、その場を去ろうとした時だった。
「ねえ、安達さん」
ふと佐藤さんが声をかけてきた。
「さっきのこと、ほんとに気にしなくていいと思うよ」
「さっき……って、石橋問題ですか?」
「うん。性格は人それぞれなんだから」
慎重過ぎるせいで友だちからからかわれてしまう――佐藤さんは、そんな私を励まそうとしたのだろう。
だけど、なんとなく素直に頷きたくなかった。私自身、自分のそういうところを気にしていたからかもしれない。
「だったら、渡らなきゃいけない時はどうすればいいんですか?」
私が問い返すと、佐藤さんは大きく頷いてみせた。
「大丈夫。きっと君なら渡れるよ。それに一緒に渡ってくれる人が現れるかもしれない」
一緒に渡ってくれる人? それって、なんだかどこかで聞いたような――。
(あれ?)
私は目を閉じて、かぶりを振った。
――その時は、俺と手をつないで渡りましょう。
誰がそう言ったのか思い出して、私は困惑しながら目を開ける。
……長瀬さんだ。
「ね、みずほさん」
さっきまで佐藤さんがいた場所には、笑みを浮かべた長瀬さんが立っていた。もちろんチェックのシャツ姿ではなく、見るからに上質なスーツをトップモデルみたいに着こなして。
* * * * *
「わっ!」
ベッドから跳ね起きると、最近ようやく見慣れてきた部屋の景色が目に入ってきた。
「あれって……」
私は夢を見ていたのだ、もう何年も前のインターシップの時の。
「ねえ、安達さん」
ふと佐藤さんが声をかけてきた。
「さっきのこと、ほんとに気にしなくていいと思うよ」
「さっき……って、石橋問題ですか?」
「うん。性格は人それぞれなんだから」
慎重過ぎるせいで友だちからからかわれてしまう――佐藤さんは、そんな私を励まそうとしたのだろう。
だけど、なんとなく素直に頷きたくなかった。私自身、自分のそういうところを気にしていたからかもしれない。
「だったら、渡らなきゃいけない時はどうすればいいんですか?」
私が問い返すと、佐藤さんは大きく頷いてみせた。
「大丈夫。きっと君なら渡れるよ。それに一緒に渡ってくれる人が現れるかもしれない」
一緒に渡ってくれる人? それって、なんだかどこかで聞いたような――。
(あれ?)
私は目を閉じて、かぶりを振った。
――その時は、俺と手をつないで渡りましょう。
誰がそう言ったのか思い出して、私は困惑しながら目を開ける。
……長瀬さんだ。
「ね、みずほさん」
さっきまで佐藤さんがいた場所には、笑みを浮かべた長瀬さんが立っていた。もちろんチェックのシャツ姿ではなく、見るからに上質なスーツをトップモデルみたいに着こなして。
* * * * *
「わっ!」
ベッドから跳ね起きると、最近ようやく見慣れてきた部屋の景色が目に入ってきた。
「あれって……」
私は夢を見ていたのだ、もう何年も前のインターシップの時の。