交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
ゲストルームに洗面所やトイレがあって、本当に助かった。
今日は休みだし、この時間なら長瀬さんはまだ寝ているだろうけれど、スッピンのまま顔を合わせるわけにはいかない。
それにここの冷蔵庫には水しか入っていないから、近くのコンビニで朝食用に何か買ってこなければ。
私は簡単に身支度を整え、部屋のドアを開けたが――。
「えっ?」
歩き出だそうとして、その場に固まってしまった。
辺りには、コーヒーのいい香りが漂っていた。しかもリビングの方からは、誰かが動き回っているらしい控えめな物音も聞こえてくる。まるでうるさくないよう気を遣っているみたいに。
「ええっ?」
まさか長瀬さんはもう起きているのだろうか? 私は慌ててリビングへ向かい、扉を押し開けた。
「……長瀬さん」
「ああ、みずほさん。おはようございます」
リビングの奥には広いアイランドキッチンがあるが、そこに紺色のエプロンをかけた長瀬さんが立っていた。
「あ、はい。おはようございます」
「すみません。起こしてしまいましたか。あまり音を立てないように気をつけたつもりなんですが」
「いえ、そんなことは――」
美形の人はエプロン姿さえも、さまになる。
私は口を開けたまま見とれていたが、「少し待っていてくださいね」と言われて、やっとわれに帰った。
「あの、長瀬さん、何をなさっているんですか?」
「ああ、ホットケーキを作ろうかと思って」
「ホットケーキ?」
今日は休みだし、この時間なら長瀬さんはまだ寝ているだろうけれど、スッピンのまま顔を合わせるわけにはいかない。
それにここの冷蔵庫には水しか入っていないから、近くのコンビニで朝食用に何か買ってこなければ。
私は簡単に身支度を整え、部屋のドアを開けたが――。
「えっ?」
歩き出だそうとして、その場に固まってしまった。
辺りには、コーヒーのいい香りが漂っていた。しかもリビングの方からは、誰かが動き回っているらしい控えめな物音も聞こえてくる。まるでうるさくないよう気を遣っているみたいに。
「ええっ?」
まさか長瀬さんはもう起きているのだろうか? 私は慌ててリビングへ向かい、扉を押し開けた。
「……長瀬さん」
「ああ、みずほさん。おはようございます」
リビングの奥には広いアイランドキッチンがあるが、そこに紺色のエプロンをかけた長瀬さんが立っていた。
「あ、はい。おはようございます」
「すみません。起こしてしまいましたか。あまり音を立てないように気をつけたつもりなんですが」
「いえ、そんなことは――」
美形の人はエプロン姿さえも、さまになる。
私は口を開けたまま見とれていたが、「少し待っていてくださいね」と言われて、やっとわれに帰った。
「あの、長瀬さん、何をなさっているんですか?」
「ああ、ホットケーキを作ろうかと思って」
「ホットケーキ?」