交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
二人と相談した結果、私は由貴たちと一緒に長瀬さんの家に戻ることにした。
「しっかしすごいとこ住んでるなあ」
「こら、タカくん!」
エントランスを入ってから、ずっとキョロキョロしているタカくんをたしなめ、由貴が「大丈夫?」と訊いてくれた。
「うん。ありがとう」
よく考えてみれば、キスされただけなのだ。他の人にとってはたいしたことじゃないかもしれず、ましてアメリカで暮らしていた長瀬さんにすれば挨拶みたいなものだったかもしれない。
だけど私は何もなかったことにはできないし、このまま今の生活を続けることもできない。たとえ名目上は彼の妻だとしても。
私は大きく息を吸って、インターフォンを押した。鍵は持っているけれど、そうすることで互いの立場をはっきりさせようと思ったのだ。というか、こうなったらここを出ていくしかなわけで――。
ところが中から応答はなかった。さらに二回繰り返したが、やはり反応はない。
「出かけちゃったのかしら?」
「もしかしたら、みずほを探しに行ったのかも」
「えっ?」
私と由貴が顔を見合わせていると、タカくんが一歩前に出た。
「留守ならチャンスじゃん。さっさと中に入って、荷物をピックアップして帰ろうよ。俺、今日はフットサルに行くことになってるしさ」
確かにタカくんの言うとおりだ。今なら、長瀬さんと顔を合わせずにすむかもしれない。
「わ、わかった」
私は鍵を開け、由貴たちを連れて中に入った。
「しっかしすごいとこ住んでるなあ」
「こら、タカくん!」
エントランスを入ってから、ずっとキョロキョロしているタカくんをたしなめ、由貴が「大丈夫?」と訊いてくれた。
「うん。ありがとう」
よく考えてみれば、キスされただけなのだ。他の人にとってはたいしたことじゃないかもしれず、ましてアメリカで暮らしていた長瀬さんにすれば挨拶みたいなものだったかもしれない。
だけど私は何もなかったことにはできないし、このまま今の生活を続けることもできない。たとえ名目上は彼の妻だとしても。
私は大きく息を吸って、インターフォンを押した。鍵は持っているけれど、そうすることで互いの立場をはっきりさせようと思ったのだ。というか、こうなったらここを出ていくしかなわけで――。
ところが中から応答はなかった。さらに二回繰り返したが、やはり反応はない。
「出かけちゃったのかしら?」
「もしかしたら、みずほを探しに行ったのかも」
「えっ?」
私と由貴が顔を見合わせていると、タカくんが一歩前に出た。
「留守ならチャンスじゃん。さっさと中に入って、荷物をピックアップして帰ろうよ。俺、今日はフットサルに行くことになってるしさ」
確かにタカくんの言うとおりだ。今なら、長瀬さんと顔を合わせずにすむかもしれない。
「わ、わかった」
私は鍵を開け、由貴たちを連れて中に入った。