交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
「え……っと」
いったいどう反応すればいいのだろう? 私は目を見開いたまま、その場に立ち竦んだ。
(今、結婚しましょう……って言った? それとも私、聞き間違えた?)
すると固まってしまった私を心配したのか、長瀬さんはすぐに表情を改めた。
ゆるく撫でつけられた黒髪、高い鼻梁、少しだけまなじりの上がった切れ長の目、意志の強そうな引き締まった口元――真顔になったことで隙のない美貌がいっそう強調され、私はますますうろたえてしまう。
それなのに、彼はダメ押しするように繰り返した。
「どうか俺と結婚してください、みずほさん」
やっぱり、とんでもない悪夢を見ているのかもしれない。
結婚式間際に花婿が失踪したかと思ったら、そのいとこだというとびきりの男前がいきなり現れ、プロポーズしてきたのだ。たった今まで彼としゃべったこともなければ、顔を合わせたことさえないというのに。
ベタに頬をつねりそうになるのを堪え、私はかぶりを振った。
「ちょ――」
「えっ?」
「ちょ、ちょうどよくなんか……ないんですけど、全然」
言いたいことは山ほどあるのに、うまく言葉が出てこない。それでも私は必死の思いで、「冗談はやめてください」と声を絞り出すように訴えた。
いったいどう反応すればいいのだろう? 私は目を見開いたまま、その場に立ち竦んだ。
(今、結婚しましょう……って言った? それとも私、聞き間違えた?)
すると固まってしまった私を心配したのか、長瀬さんはすぐに表情を改めた。
ゆるく撫でつけられた黒髪、高い鼻梁、少しだけまなじりの上がった切れ長の目、意志の強そうな引き締まった口元――真顔になったことで隙のない美貌がいっそう強調され、私はますますうろたえてしまう。
それなのに、彼はダメ押しするように繰り返した。
「どうか俺と結婚してください、みずほさん」
やっぱり、とんでもない悪夢を見ているのかもしれない。
結婚式間際に花婿が失踪したかと思ったら、そのいとこだというとびきりの男前がいきなり現れ、プロポーズしてきたのだ。たった今まで彼としゃべったこともなければ、顔を合わせたことさえないというのに。
ベタに頬をつねりそうになるのを堪え、私はかぶりを振った。
「ちょ――」
「えっ?」
「ちょ、ちょうどよくなんか……ないんですけど、全然」
言いたいことは山ほどあるのに、うまく言葉が出てこない。それでも私は必死の思いで、「冗談はやめてください」と声を絞り出すように訴えた。