交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
スツール型の椅子は座りにくそうに見えたが、長瀬さんが手を貸してくれたので、問題なく腰を下ろすことができた。少なくとも彼はさりげない気遣いができる人らしい。
それにしても、どうしてこんなことになったのだろう?
さっきからの展開も謎だが、それ以上に私をとまどわせているものは自分自身の反応だった。
私は会ったばかりの長瀬さんを信用し、その話を聞こうとしている。もっと他にしなければいけないことがあるはずなのに。だいたい彼が本当に圭介さんのいとこかどうかもわからないのに。
「さてと」
長瀬さんが向かい合って座り、私と視線を合わせる。それから安心させようとしたのか、笑みを浮かべて頷いてみせた。
(えっ?)
その瞬間、妙な既視感を覚えた。
こんなふうに彼と向かい合って見つめ合うのは初めてではない気がしたのだ。
まるで仲のいい友だちと一緒にいるみたいな、不思議な感覚。
(私……この人を……知ってる?)
もしかして前にもどこかで、同じシチュエーションを経験したのだろうか?
いや、もちろんありえない。もし一度でもこんなきらびやかな人に会っていたら、絶対に忘れるはずがなかった。
それなのに強ばっていた身体からは、いつの間にか力が抜けていた。
「すみません、みずほさん。すっかり君を混乱させてしまいましたね」
「い、いえ」
それにしても、どうしてこんなことになったのだろう?
さっきからの展開も謎だが、それ以上に私をとまどわせているものは自分自身の反応だった。
私は会ったばかりの長瀬さんを信用し、その話を聞こうとしている。もっと他にしなければいけないことがあるはずなのに。だいたい彼が本当に圭介さんのいとこかどうかもわからないのに。
「さてと」
長瀬さんが向かい合って座り、私と視線を合わせる。それから安心させようとしたのか、笑みを浮かべて頷いてみせた。
(えっ?)
その瞬間、妙な既視感を覚えた。
こんなふうに彼と向かい合って見つめ合うのは初めてではない気がしたのだ。
まるで仲のいい友だちと一緒にいるみたいな、不思議な感覚。
(私……この人を……知ってる?)
もしかして前にもどこかで、同じシチュエーションを経験したのだろうか?
いや、もちろんありえない。もし一度でもこんなきらびやかな人に会っていたら、絶対に忘れるはずがなかった。
それなのに強ばっていた身体からは、いつの間にか力が抜けていた。
「すみません、みずほさん。すっかり君を混乱させてしまいましたね」
「い、いえ」