いつか、君に「」と伝えられたら。
死神さんは、そう言ってケラケラと笑う。

「……あぁ、そうだ……僕は、名前なんてないから好きに呼んでもらって良いよ」

そう言いながら、死神さんはフードを脱いだ。綺麗な赤い瞳が、僕を捉える。風が吹いて、柔らかそうな白髪が揺れた。

「……それで、君は何か未練があるからこの世を彷徨っているんだ……何か心当たりはないかな?」

死神さんは、そう言うと僕を見つめる。僕は、必死に死ぬ前のことを思い出した。

脳裏に映るのは、僕に微笑む可愛らしい女性の姿。この女性が誰かは分からないけど、何だか懐かしい気分になるな……。

「……ふふっ。何か思い出したみたいだね?」

「……名前は分からないんですけど、女性の顔を思い出しました……」

僕は、死神さんに思い出したことを話す。死神さんは、何かを考え込むと僕を見つめた。

「……あぁ、そういうことか……」

死神は、ふっと微笑むと「そうかそうか」と何度も小さく頷く。

「……つまり、君は彼女である美優(みゆう)さんに伝えたいことがあるんだね?」

死神さんの口から出た名前に、僕はすべてを思い出した。

僕は、中学生の時に出会った美優って名前の女の子に恋をしたんだ。そして、僕から告白して付き合うになったんだけど……高校3年生で事故に巻き込まれたんだった……。
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