いつか、君に「」と伝えられたら。
「……拓実……会いたいよ……」

僕は泣く美優を、じっと見つめることしか出来ない。誰かが、僕の肩に手を乗せた。死神さんは、真剣な顔で僕を見る。

「……死神さん……?」

「会いに行っておいで」

そう言って、死神さんは僕の背中を押した。その勢いで僕が数歩前に出ると、ゆっくりと美優は僕の方を見る。

「……拓実……?」

「美優……」

僕が微笑むと、美優は僕に勢いよく抱きついた。

「……寂しかったよ……」

「ごめん……ごめんね。美優……今日は、美優に伝えたいことがあって来たんだ……」

僕が美優の頭を撫でると、美優はゆっくりと離れると僕を見つめる。

「……ありがとう。美優、大好きだよ」

僕が笑うと、僕の隣に来た死神さんは僕に手を出した。多分、死神さんの手を掴んだら天国に行けるんだ。

「拓実、待って……!」

僕が死神さんの手を握ると、美優は僕の手を掴む。僕は、微笑むと無言で首を横に振った。美優は、泣きながら僕の手を放す。

強い眠気が襲ってくる。その眠気に抗うことなく、僕は目を閉じた。

今は、「」と言わないでおこうかな。もし、会える機会があれば言いたいことがあるんだ。

「さようなら」と。
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