恋愛タイムカプセル
同じ美術部員である紺野なぎさがその話をしてきた時、私は驚いた。
「私、春樹くんのこと好きなんだ」
それはよく耳にしているはずの言葉だったが、身近な人間から聞かされたので驚いた。
なぎさちゃんは活発な女子生徒だった。本来美術部にはいないようなタイプで、持ち前の明るさでみんなを笑わせていた。
美術部員達は春樹くんの人気っぷりをみんな知っていた。だから彼女の発言は特に不思議ではなかった。
「朝陽ちゃんも好きなんでしょ?」
彼女に尋ねられた時、私はどうしようかと困った。私の気持ちを知っているのは仲のいいごくごく一部の友達だけだ。彼女が知っているのは私の態度がバレバレだからなのか、それともその友人が喋ったからなのか。理由はわからないが、バレてしまったことに変わりない。
私は「お互い頑張ろうね」なんて謎の宣言をされた。私は彼女と春樹くんを取り合う想像なんてカケラもできなかった。
けれどその話を聞いたからか、彼女が春樹くんのそばにいるととても目につくようになった。
彼女は積極的な方ではない。けれど、それでも気になるのは私が彼女に嫉妬し始めたからかも知れなかった。彼女は私と違い社交的で、賢かった。彼と釣り合うだけの見た目も、人望も持っていた。
勝敗など決する前から明らかだった。けれど私は、心のどこかで彼が選んでくれることを期待していた。
しかし、私はまた彼女から宣言を聞くことになった。それは、「春樹くんとなぎさちゃんが付き合う」という宣言だった。
彼女は自慢するような言い方はしなかった。「私、春樹くんに告白したから」、と事務的に私に告げた。そして彼がオーケーしたことも。
だから諦めてね、とかそんな意地の悪い言い方はされていない。ただ、私は受け止め切れないぐらいショックを受けた。
私はベソベソ泣きながら下校した。心配してきた先輩達に失恋したことを告げて、慰められた。
いかにも青春っぽいシーンだったが、当時の私はそんなことを感じる余裕などなかった。ただ悲しかった。
「私、春樹くんのこと好きなんだ」
それはよく耳にしているはずの言葉だったが、身近な人間から聞かされたので驚いた。
なぎさちゃんは活発な女子生徒だった。本来美術部にはいないようなタイプで、持ち前の明るさでみんなを笑わせていた。
美術部員達は春樹くんの人気っぷりをみんな知っていた。だから彼女の発言は特に不思議ではなかった。
「朝陽ちゃんも好きなんでしょ?」
彼女に尋ねられた時、私はどうしようかと困った。私の気持ちを知っているのは仲のいいごくごく一部の友達だけだ。彼女が知っているのは私の態度がバレバレだからなのか、それともその友人が喋ったからなのか。理由はわからないが、バレてしまったことに変わりない。
私は「お互い頑張ろうね」なんて謎の宣言をされた。私は彼女と春樹くんを取り合う想像なんてカケラもできなかった。
けれどその話を聞いたからか、彼女が春樹くんのそばにいるととても目につくようになった。
彼女は積極的な方ではない。けれど、それでも気になるのは私が彼女に嫉妬し始めたからかも知れなかった。彼女は私と違い社交的で、賢かった。彼と釣り合うだけの見た目も、人望も持っていた。
勝敗など決する前から明らかだった。けれど私は、心のどこかで彼が選んでくれることを期待していた。
しかし、私はまた彼女から宣言を聞くことになった。それは、「春樹くんとなぎさちゃんが付き合う」という宣言だった。
彼女は自慢するような言い方はしなかった。「私、春樹くんに告白したから」、と事務的に私に告げた。そして彼がオーケーしたことも。
だから諦めてね、とかそんな意地の悪い言い方はされていない。ただ、私は受け止め切れないぐらいショックを受けた。
私はベソベソ泣きながら下校した。心配してきた先輩達に失恋したことを告げて、慰められた。
いかにも青春っぽいシーンだったが、当時の私はそんなことを感じる余裕などなかった。ただ悲しかった。