恋愛タイムカプセル
帰宅してすぐに予定を確認すると春樹くんにメッセージを送った。
今週は土曜に仕事が入っているため、振替休日を図書館の休館日である月曜に取ることにした。
彼にメッセージを送り、ベッドに寝転びながら今日借りた本をめくる。
────こんな景色を彼と一緒に見れたら幸せだろうな。
写真集に載ったポーランドの原生林を眺めながら妄想にふける。
こんな場所に彼と行って、彼が本を読む傍で私が絵を描く。なんて、少女漫画の読みすぎだろうか。もう大人なのに、いつまでも私の中身は高校生のままなのかもしれない。
本を読んでいると不意にスマホが鳴った。メッセージではなく、電話だ。
しかし画面に表示されている番号は知らない番号だ。〇八〇から始まる番号に見覚えはない。数百件を誇る私のアドレス帳にも載っていないなんて、いったい誰だろう。
普段なら知らない番号には出ない。けれどなんだか、その電話に意味があるように思えて、恐る恐る画面に指をスライドさせた。
「はい……もしもし」
『朝陽?』
その声にはどことなく聞き覚えがあった。それはつい数時間前に聞いた声によく似ていた。私はもしやと思って聞き返す。
「……春樹くん?」
『うん』
短い言葉が私を安心させる。春樹くんだ。
だけど、どうして彼が私の電話番号を知っているのだろう。彼に教えた覚えはないのに。
『ごめん。図書カード作った時に書いてもらった電話番号、見たんだ』
「あ、なんだ……」
『個人情報保護法違反になるけど』
彼はおどけたように言った。もちろん私はそれで彼を訴えるつもりはない。電話してくれたことは嬉しかっった。
『月曜のことだけど、いいよ。どこか行きたいところある?』
「うーん……春樹くんはどこに行きたい?」
『図書館に行きたいんだ』
私は思わずえ? と首を傾げた。
何せ、彼の勤め先は図書館だ。それなのにデート先まで図書館だなんて、奇妙だと思った。
「図書館? どうして?」
『ああ、俺の職場じゃないんだ。小学生の時によく行ってた図書館』
だとしても図書館だ。私はやっぱり不思議な気持ちになった。
彼が小学生の時に通っていた図書館なら私も知っている。けれどそこに一体なんの用事があるのだろう。そこに借りたい本があるのだろうか。春樹くんが働いている図書館の方がずっと立派で蔵書数も多いのに。
けれど彼が提案するデート先にケチなんて付けられない。それに今の彼が素晴らしいデート先を選ぶ想像も出来なかった。
私はいいよ、と答えた。
『公民館のバス停、覚えてる?』
「うん」
『朝の十時、だったら早すぎるかな』
「そんなことない」
たくさんあなたといたいから。そんな想いが早口にさせた。
デート先は奇妙だが、彼と懐かしい場所を歩けることは嬉しい。私達は約束を交わし、電話を切った。
今週は土曜に仕事が入っているため、振替休日を図書館の休館日である月曜に取ることにした。
彼にメッセージを送り、ベッドに寝転びながら今日借りた本をめくる。
────こんな景色を彼と一緒に見れたら幸せだろうな。
写真集に載ったポーランドの原生林を眺めながら妄想にふける。
こんな場所に彼と行って、彼が本を読む傍で私が絵を描く。なんて、少女漫画の読みすぎだろうか。もう大人なのに、いつまでも私の中身は高校生のままなのかもしれない。
本を読んでいると不意にスマホが鳴った。メッセージではなく、電話だ。
しかし画面に表示されている番号は知らない番号だ。〇八〇から始まる番号に見覚えはない。数百件を誇る私のアドレス帳にも載っていないなんて、いったい誰だろう。
普段なら知らない番号には出ない。けれどなんだか、その電話に意味があるように思えて、恐る恐る画面に指をスライドさせた。
「はい……もしもし」
『朝陽?』
その声にはどことなく聞き覚えがあった。それはつい数時間前に聞いた声によく似ていた。私はもしやと思って聞き返す。
「……春樹くん?」
『うん』
短い言葉が私を安心させる。春樹くんだ。
だけど、どうして彼が私の電話番号を知っているのだろう。彼に教えた覚えはないのに。
『ごめん。図書カード作った時に書いてもらった電話番号、見たんだ』
「あ、なんだ……」
『個人情報保護法違反になるけど』
彼はおどけたように言った。もちろん私はそれで彼を訴えるつもりはない。電話してくれたことは嬉しかっった。
『月曜のことだけど、いいよ。どこか行きたいところある?』
「うーん……春樹くんはどこに行きたい?」
『図書館に行きたいんだ』
私は思わずえ? と首を傾げた。
何せ、彼の勤め先は図書館だ。それなのにデート先まで図書館だなんて、奇妙だと思った。
「図書館? どうして?」
『ああ、俺の職場じゃないんだ。小学生の時によく行ってた図書館』
だとしても図書館だ。私はやっぱり不思議な気持ちになった。
彼が小学生の時に通っていた図書館なら私も知っている。けれどそこに一体なんの用事があるのだろう。そこに借りたい本があるのだろうか。春樹くんが働いている図書館の方がずっと立派で蔵書数も多いのに。
けれど彼が提案するデート先にケチなんて付けられない。それに今の彼が素晴らしいデート先を選ぶ想像も出来なかった。
私はいいよ、と答えた。
『公民館のバス停、覚えてる?』
「うん」
『朝の十時、だったら早すぎるかな』
「そんなことない」
たくさんあなたといたいから。そんな想いが早口にさせた。
デート先は奇妙だが、彼と懐かしい場所を歩けることは嬉しい。私達は約束を交わし、電話を切った。