恋愛タイムカプセル
episode 9. インビテーション
《《元王子様》》の春樹くんと私、篠塚朝陽の高校生みたいな付き合ってから初めてのデートは無事終わった。
私は彼といる最中、何度も彼があの北原春樹くんであることを確認した。
格好はダサいのにやることは一丁前にカッコいいから困る。そのせいで私は何度恥ずかしい思いをしたかわからない。
私はもっと、穏やかにこの恋を育てて行くつもりだったのだ。
ところがどっこい、彼は付き合う前とは豹変し、王子様と呼ばれていた頃とは少し違う姿を見せた。
決して悪いわけではない。ただあまりにも変わりすぎてついていけなかった。彼はもっと、穏やかで、落ち着いていて、清廉とした人だと思っていたのだ。事実、高校の時の彼は王子様そのものだった。
私は度々彼との口付けを思い出し、恥ずかしさに襲われた。
彼らしくない、年頃の男性みたいな口付けだった。彼は私と同じ二十五歳だから年頃ではあるが、まったくもって予想外だ。
逆に、高校の時の彼が今みたいだったら学校中の女生徒が発狂していたかもしれない。
次の週末か月曜は、また彼と会えないだろうか────。またそんなことを考えた。
しかし、そんな私の甘ったるい空想上の週末は唐突に破壊された。
「え、出張ですか」
ミーティングで唐突に「静岡に一泊ニ日の出張に行く」ことを告げられた。日月と、現場の下見に行って施主と打ち合わせを行うのだ。
以前から出ていた話ではない。今日突然結城社長が持ってきた話だった。
「先方さんがかなり急いでてな。空いてるメンバーが俺と篠塚と桑原だけなんだ。だからこの三人で行く」
「そうですか……」
「なんだ、デートだったのか?」
「違います!」
ガッカリしていた思考を振り払い、気を取り直して渡された資料を見る。
今回の仕事はオフィスの設計だ。私がいつも任されている個人邸よりは大規模なものになるだろう。そう思うとやる気が湧く。
「恋愛もいいが、しっかり仕事してくれよ。向こうさんはお前のデザインを見せたらなかなか気に入ってたぞ」
「……っ本当ですか」
「そういうわけだ。予定しておいてくれ。詳細はまたメールで送っておく」
結城社長の話が終わり、私はご機嫌でデスクに戻った。
卓上カレンダーに日曜日と月曜日の予定を書き込む。彼の休みがだだかぶりなのは残念だが、二週連続で会う必要もないだろう。
電話やメッセージで連絡を取り合っているし、特別寂しさは感じない。
私はニンマリ笑い、仕事に取りかかった。
私は彼といる最中、何度も彼があの北原春樹くんであることを確認した。
格好はダサいのにやることは一丁前にカッコいいから困る。そのせいで私は何度恥ずかしい思いをしたかわからない。
私はもっと、穏やかにこの恋を育てて行くつもりだったのだ。
ところがどっこい、彼は付き合う前とは豹変し、王子様と呼ばれていた頃とは少し違う姿を見せた。
決して悪いわけではない。ただあまりにも変わりすぎてついていけなかった。彼はもっと、穏やかで、落ち着いていて、清廉とした人だと思っていたのだ。事実、高校の時の彼は王子様そのものだった。
私は度々彼との口付けを思い出し、恥ずかしさに襲われた。
彼らしくない、年頃の男性みたいな口付けだった。彼は私と同じ二十五歳だから年頃ではあるが、まったくもって予想外だ。
逆に、高校の時の彼が今みたいだったら学校中の女生徒が発狂していたかもしれない。
次の週末か月曜は、また彼と会えないだろうか────。またそんなことを考えた。
しかし、そんな私の甘ったるい空想上の週末は唐突に破壊された。
「え、出張ですか」
ミーティングで唐突に「静岡に一泊ニ日の出張に行く」ことを告げられた。日月と、現場の下見に行って施主と打ち合わせを行うのだ。
以前から出ていた話ではない。今日突然結城社長が持ってきた話だった。
「先方さんがかなり急いでてな。空いてるメンバーが俺と篠塚と桑原だけなんだ。だからこの三人で行く」
「そうですか……」
「なんだ、デートだったのか?」
「違います!」
ガッカリしていた思考を振り払い、気を取り直して渡された資料を見る。
今回の仕事はオフィスの設計だ。私がいつも任されている個人邸よりは大規模なものになるだろう。そう思うとやる気が湧く。
「恋愛もいいが、しっかり仕事してくれよ。向こうさんはお前のデザインを見せたらなかなか気に入ってたぞ」
「……っ本当ですか」
「そういうわけだ。予定しておいてくれ。詳細はまたメールで送っておく」
結城社長の話が終わり、私はご機嫌でデスクに戻った。
卓上カレンダーに日曜日と月曜日の予定を書き込む。彼の休みがだだかぶりなのは残念だが、二週連続で会う必要もないだろう。
電話やメッセージで連絡を取り合っているし、特別寂しさは感じない。
私はニンマリ笑い、仕事に取りかかった。