恋愛タイムカプセル
出張が終わり、いつもの毎日に戻ってから数日。私のスマホに一件のメッセージが届いた。
それは高校の時のクラスメイト、青木エリからだった。
彼女からメッセージが来るのは久しぶりだ。多分、高校を卒業して以来じゃないだろうか。
当時それほど仲は良くなかったが、クラスメイトとして普通に話す存在だった。
メッセージは同窓会のお誘いだった。来月末、高校の同窓会を開くので参加できるかどうか、というものだ。
私は少し考えて、高校の時仲の良かった友人である美緒にメッセージを送った。
『久しぶり。青木さんからメッセージで同窓会のお誘いが来たんだけど、美緒は行く?』
美緒は高校を卒業してから何度か会って遊んだことがあった。学校が離れてしまったため以前より距離は空いたが、今でも仲の良い友達だと思っている。
しばらくして美緒から返事が来た。
『久しぶり〜! 元気してた? お誘いうちにも来てたよ! 私は行くつもりだけど朝陽は行く?』
美緒が行くなら行こうか。正直なところ、仲のいい友達以外とはあまり会いたくなかった。
春樹くんとなぎさちゃんが別れてから《《あの噂》》が流れたために、私はいじめこそされなかったものの、嫌な視線を向けられることが多くなった。
美緒は「分かっている」友達だからいいが、他はそうではない。
ふとその時、春樹くんのことを思い出した。
私にお誘いが来ているのだから、春樹くんにも来ているはずだ。私は今度は春樹くんにメッセージを送った。
次の日の朝、春樹くんから返事が来ていた。
春樹くんは参加するかどうか迷っているらしい。私はそれもそうだな、と思った。
同窓会には、もしかしたらなぎさちゃんが来るかもしれない。そしたら、彼はまた辛いことと向き合わなくてはならなくなるだろう。
それに彼が同窓会に行ってもみんな気が付かないかもしれない。彼は高校の時からかなり代わってしまった。当時の彼を知る人が見れば、今の彼はかなり落ちぶれていると思うことだろう。人にとやかく言われるぐらいなら行かない方がマシだ。
────私も行かない方がいいかな。でも、せっかく美緒が行くって言ってるし……。
また、春樹くんからメッセージが来た。
『朝陽が行くなら俺も行くよ』
また、私を困らせるようなメッセージだ。こんなふうに言われたら行きたくないなんて言えなくなってしまう。
私は迷った挙句、青木さんに参加の返事を送った。
ただの同窓会だ。普通に食事しておしゃべりするだけだ。みんなあの頃とは違うし、私も、春樹くんも違う。だから心配しても仕方がない────。そう納得した。