恋愛タイムカプセル
高校の時の彼はもっと明るかった。お喋りではなかったけど、今とは雰囲気が違った。シャキシャキ喋っていたし、爽やかだった。
今は、暗くて地味だ。なんとなく陰鬱な空気感が漂っている。
途端、私の胸を焦りと緊張が覆い始めた。
「春樹くんは、一人暮らし?」
遠回しに聞いてみた。彼女がいる? と尋ねる勇気はなかった。
「ああ。一人暮らしだよ」
なんとなく、安心してしまう。久しぶりに会った憧れの人が結婚していたなんてショックは受けたくなかった。
恐らくだけど、付き合っている彼女もいない。
私の喉に言葉がつっかえる。聞く意味のない言葉が、すぐそこまで出かかっていた。
────やっぱり、彼女とは別れたの?
春樹くんは私の心中などつゆ知らず、刺身の盛り合わせに手をつけた。
やっぱり、そうなのかもしれない。だから、今こんなふうになっているのかもしれない。自責の念が込み上げ、過去の記憶が蘇る。
春樹くんから連絡が来たときはすごく嬉しかった。私のことを覚えていてくれたことも。
けれど勘違いしてはいけない。彼の中で私は「悪者」だ。それ以上になんて、なるわけがない。
今こうしてここに来てくれていることも、期待してはいけない。きっと、何かあるのだ。