恋愛タイムカプセル
episode 2.終わりは愛の始まり
初恋は思い出のままがいい────。
いつか、そんな言葉を聞いた。それは本当なのかもしれない。
先日、かつての片思いの相手である春樹くんに会ったわけだが、私の想像のように現実は甘くなかった。
────絶対聞かれるだろうな。
私は浮かない気持ちのまま出社した。やはり、事務所に入るなり由香が私の顔を見た途端駆け寄ってきた。
「どうだった!? 例の王子様!」
やっぱりそうだ。彼女は私がかつての好きだった人と熱い夜を過ごしたとでも思っているのだろう。
だけど残念ながら、昨日は健全な時間に解散した。
私は首を横に振った。由香の表情がえー、と残念そうに歪む。
「ご飯行ったんだよね?」
「行ったけど、別に何も。普通の話をしてそれで────」
彼の変貌っぷりを思い出す。話はそこそこ楽しく出来たが、やっぱり見た目が違いすぎる。あれでは王子様じゃなく平民だ。
「どうしたの?」
「それが……うーん、彼の見た目がすっごく変わってたんだ」
「いい方? 悪い方? いや、悪い方ね」
私の浮かない表情を見て察してくれたらしい。悪い、なんて彼に失礼だけど、「王子様」と呼ばれ学校中の女生徒からモテまくっていた彼とは思えぬ様子だった。かつての王子様は一体どこへ行ったのだろう。
「まあでも、男の人ってちょっと悪いぐらいがいいんじゃない?」
由香は私とは違う想像をしたらしい。ヤンキーになったとでも思っているのだろうか。彼は悪くなったのではない。ダサくなったのだ。それもあんな、オタクっぽい見た目に。
彼は女の子とデートだ、なんて考えなかったのだろう。私が女の子として見られていないのだ。ウキウキしながらおしゃれした自分が馬鹿みたいだった。
「そんなんじゃないよ。もう、とにかくダサかったの。電車男って知ってる? まさにあれを体現したような……あれじゃあ、付き合いたいとは思えないかな……」
「この業界いると目が肥えちゃうからねえ。おしゃれな人多いし、結城社長はイケメンだしね。イケメンじゃないにしても、ダサい人はごめんよね。ま、そんなこともあるわよ。過去の人ってことで忘れなさいな」
まったく、人を焚きつけておいて────。
昨日の彼がもっと格好よかったら、由香の興味ももう少し続いただろうか。そして私の恋心にもう一度火がついただろうか。
けれど残念ながらかつてのような気持ちは感じなかった。その代わり、別の想いが生まれた。
ときめきはしない。けれど彼と話してみて、やっぱり特別なものを感じた。
変わったのは見た目と雰囲気だけだ。穏やかな話口調はそのままに、彼に一体何があったのか。
逆に興味が湧いてしまった。あの頃は近づけてはならないと離れたものなのに。
いつか、そんな言葉を聞いた。それは本当なのかもしれない。
先日、かつての片思いの相手である春樹くんに会ったわけだが、私の想像のように現実は甘くなかった。
────絶対聞かれるだろうな。
私は浮かない気持ちのまま出社した。やはり、事務所に入るなり由香が私の顔を見た途端駆け寄ってきた。
「どうだった!? 例の王子様!」
やっぱりそうだ。彼女は私がかつての好きだった人と熱い夜を過ごしたとでも思っているのだろう。
だけど残念ながら、昨日は健全な時間に解散した。
私は首を横に振った。由香の表情がえー、と残念そうに歪む。
「ご飯行ったんだよね?」
「行ったけど、別に何も。普通の話をしてそれで────」
彼の変貌っぷりを思い出す。話はそこそこ楽しく出来たが、やっぱり見た目が違いすぎる。あれでは王子様じゃなく平民だ。
「どうしたの?」
「それが……うーん、彼の見た目がすっごく変わってたんだ」
「いい方? 悪い方? いや、悪い方ね」
私の浮かない表情を見て察してくれたらしい。悪い、なんて彼に失礼だけど、「王子様」と呼ばれ学校中の女生徒からモテまくっていた彼とは思えぬ様子だった。かつての王子様は一体どこへ行ったのだろう。
「まあでも、男の人ってちょっと悪いぐらいがいいんじゃない?」
由香は私とは違う想像をしたらしい。ヤンキーになったとでも思っているのだろうか。彼は悪くなったのではない。ダサくなったのだ。それもあんな、オタクっぽい見た目に。
彼は女の子とデートだ、なんて考えなかったのだろう。私が女の子として見られていないのだ。ウキウキしながらおしゃれした自分が馬鹿みたいだった。
「そんなんじゃないよ。もう、とにかくダサかったの。電車男って知ってる? まさにあれを体現したような……あれじゃあ、付き合いたいとは思えないかな……」
「この業界いると目が肥えちゃうからねえ。おしゃれな人多いし、結城社長はイケメンだしね。イケメンじゃないにしても、ダサい人はごめんよね。ま、そんなこともあるわよ。過去の人ってことで忘れなさいな」
まったく、人を焚きつけておいて────。
昨日の彼がもっと格好よかったら、由香の興味ももう少し続いただろうか。そして私の恋心にもう一度火がついただろうか。
けれど残念ながらかつてのような気持ちは感じなかった。その代わり、別の想いが生まれた。
ときめきはしない。けれど彼と話してみて、やっぱり特別なものを感じた。
変わったのは見た目と雰囲気だけだ。穏やかな話口調はそのままに、彼に一体何があったのか。
逆に興味が湧いてしまった。あの頃は近づけてはならないと離れたものなのに。