陽だまり笑顔の君に



「はい、任せてください」



「それじゃ、俺は行くよ。」



そう言ってすれ違いざまに
私に紙を渡すとそのまま
兄は行ってしまった…。



どうして…わざわざ
学校の前で待ち伏せて…
そこまでして私に彼女が
いることを伝えたかったの?




あぁ、そっか。
私が嫌いだからか…




お前なんてもう好きじゃない
という当てつけに来たのか。




別に、当然のことだ。
私が高3の春に兄に
抱かれてる所を親に
見つかって離されて




兄だけが悪者にされた。




昔から仕事ばっかで
子供の面倒なんて家の
執事やメイドに任せきり
だったくせに




こういう時だけ親面して
妙に真面目ぶって、だけど残酷で。



自分たちの実の息子のくせに
まるで汚いものを扱うかの
ように兄を見ていたのを
今でも痛いほど覚えてる



悪いのは兄だけじゃないのに…
まるで私を腫れ物のように
突然、大事にし始めた両親。



そんな親が嫌いで
何より、兄を助けることもできず
ただその状況に縋ることしか
できない無力な自分が情けなくて
苦しくて辛くて悲しくて



大嫌いで…。



昔のことを思い出して
さらに体が震える



だけど、その震えを
抑えるかのように




ギュッと優しく
抱きしめられた。



「大丈夫。何があったかは知らないけど…菜々には俺がついてるから」



いつものSっ気溢れる
言葉遣いじゃなくて
最初に会った時のような
優しい口調で私を包み込む。



それだけで何故か安心できて
強ばって震えていた体が
次第に落ち着きを取り戻す。



あぁ…本当に俊くんは
私の陽だまりだな。



だけど同時に胸が痛む。
こんな陽だまりのように
優しい彼がいるにも関わらず
私はまだ心のどこかで
兄を想ってしまっていて



ものすごく申し訳ない気持ちと
だけど俊くんとも離れたくない
嫌われたくないという気持ちが
入り乱れていて…



本当、最低な女だ。
結局あの頃から何も変われてない…

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