陽だまり笑顔の君に


「萌佳、今日は用事あるって言ったよね?何でいんの?」


「あ、ごめんなさい……。たまたま、なーくんが見えたからつい」



明らかに不機嫌そうな態度をとる那桜さんに
"もか"と呼ばれたその人は謝ると
俺の方にもペコりと頭を下げた……。



「ごめんね、羽麻くん。この人、俺の彼女なんだ。そろそろ会社に戻らないと……またね。」



そう言って作られた笑顔を貼り付け
那桜さんは伝票を抜き取ると
彼女を連れてカフェを後にした……。



別に何かを聞いた訳でもない
菜々と那桜さんの過去なんて
何も知らないけど……



あの女性(ひと)……
すげー菜々に似てた。



その瞬間、嫌な想像が頭に浮かぶ。



だけど、俺はすぐにそれを
頭から振り払ったーーーーーー。



ーーーーーーーーーーーー



その日の夜



自分の部屋でベッドに
寝転びながらスマホを見つめる。



少し前に菜々からきたラインは


"これから二次会だから今日は会えなそう"



という1文だった。



まぁ、それはいい。
そんな日もある。


いや、実はちょっと寂しいけど……。


こうして1人でいるとさっきの
那桜さんの事が頭に浮かぶ


一体あの人は俺に何を求めてたんだろうか?
なんの目的があってわざわざ待ち伏せした?


少なくとも、祝福はされてなさそうだよな……


あー!もう!!
考えてもキリがない


ぐしゃぐしゃっと頭を掻いて
返信の来なくなったスマホを
ベッドの横に放り投げる。


ふと額縁に入っている1枚の
写真が目に入る


机に置いてあるそれは
今年の春に亡くなった俺の元恋人。



「結局……人の過去なんて本当の意味で解決することなんてないのかもな。夏海……俺はまだ後悔してるよ、あの時のこと」


夏海の写真を片手に
俺はいつの間にか眠りについたーーーーー。


*俊side END*
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