愛され、囲われ、堕ちていく
「伊織…」
「ん?何?」
「お願い、出来る限り喧嘩やめて?
…………怖い…」
車に乗り、帰路についている車内で伊織に抱き寄せられキス責めにあいながら、凪沙が言った。
「んーわかった。でもあんなの怒ってる内に入らないよ。
でも…そうだよな……約束する!
出来る限り、凪には見せないようにする!安心して?」
「━━━━!」

【凪にはこんな俺は見せないから、安心して!】
突然、裕隆の最期の言葉が甦った。
まさか、この言葉が最期なるとは思っていなかった。

「え…裕…くん…」
「え?凪?」
「あ…ごめんね…今、伊織が裕くんと重なって……」
頭をブルブル振る、凪沙。
今度は、凪沙から伊織に抱きついた。
「凪?どうし━━━━」
「伊織…好き…!好きなの!!」
「うん」
「大丈夫だよね…!?伊織はここにいるよね…!?」
「うん」
「そうだよね……伊織はここにいる」
「うん、ずっと傍にいるよ……」

凪沙はただ、伊織に抱きついてしがみついていた。

マンションに帰って、寝室のベットに座っている二人。
凪沙は、向かい合って伊織の足の間に挟まれている。

伊織に頬や額、首に何度もキスを受けている。
「なんか…嬉しいなぁ…」
「ん?」
「凪に“抱いて”なんて言われたことないから。
俺を求めてくれて、嬉しい…」
「ごめんね…まだご飯前なのに……
でも伊織がここにいるって、実感したくて……」
「うん、いっぱい実感して?」
「私も…伊織にキスしたい…」
「うん…どうぞ?」
「フフ…どうぞ?って、なんかおかしい…(笑)」
そう言って、伊織の頬や額にキスをする凪沙。

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