愛され、囲われ、堕ちていく
「なんで、十字架なの?この王冠も」
何度か果てて、伊織はベットの背もたれにもたれて座っている。
凪沙は動けなくて、横になったまま伊織を見上げて言った。

「名前」
凪沙の頭を撫でる伊織。
「名前?
聖道 伊織の名前?」
「そう。
“聖”と“伊”はどっちも神様みたいな意味があるでしょ?だから十字架。王冠は俺が総長してたのと、いずれ黒の王になるから」
「そっか。じゃあ…ピアスは?」
「ピアス?」
「そう、伊織が付き合う時に片方をくれてつけろって言った、このお揃いの薔薇のピアス。
黒い薔薇だから、ちょっと怖かったんだけど…」
「んーうちの組のカラーってのもあるけど、お互いがお互いのモノって意味もあるよ」
「そうだったんだぁ」
伊織が、サイドテーブルに手を伸ばして煙草を取り出した。
一本咥えて火をつけた。
そして天井に向かって、煙を吹きかける。
伊織の癖なのか、必ず最初に天井や空など上に向かって吹くのだ。
「煙草、美味しい?」
「んー?うん、旨いよ!じゃないと吸わない」
「そっか…」
「吸ってみる?」
「え━━━?」
煙草の煙を含んだ伊織が、凪沙にそのままキスをした。
「んん━━!
う…ケホッ、ケホッ…!!」
煙が口の中に入り、むせる凪沙。

「大丈夫…!?凪?」
「う…うん…大丈、夫…」
「凪には無理だな…(笑)」
「そう…みたい」
微笑むと、伊織も微笑んで頭を撫でた。
そして煙草を灰皿に押し付け消した伊織が、凪沙を組み敷いた。
「もう一回、愛し合おう…凪」
「もう…眠いよ…」
「ダーメ…俺を拒んじゃダメって言ったでしょ?」

また口唇が重なった。
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