愛され、囲われ、堕ちていく
奈落
同窓会当日。ホテル一階のパーティー会場にて━━━
「凪沙~!」
「あ、紅音」
「大丈夫だった?伊織」
「うん、まぁ…びっくりする程、スムーズに出してくれた」

いつもなら━━━━━
「俺を捨てるの?」
「いいよ、凪がそれでも一人で出ていくなら、全部壊すよ!」
「それで、部屋の中に縛りつけてもう二度と外に出れないように、監禁するから」
と言うのだ。
でも今日は“行ってらっしゃい”と普通に送り出してくれたのだ。

「そう…良かった」
「良かったのかな…?なんだか、逆に怖くて…」

凪沙は、言葉にならない恐怖に包まれていた。
これから、とんでもないことが起きるような気がして……

嵐の前の静けさのように、同窓会が楽しく過ぎていく。
「ほんと久しぶりだね~凪沙、紅音」
中学の時の友人・深江 多重が懐かしそうに言う。
「うん、そうだね」
「あ、凪沙が結婚してる~いつの間に!?」
「あー籍しか入れてないからね」
「そっか!相手はやっぱ、裕隆くん?」
「伊織だよ。裕くんは、三年前に亡くなったの…」
「え?伊織くん?
……ってことは……凪沙もヤクザの…」
「そ。私と同じ!ヤクザの女。凪沙は私の義理の妹!」
友人がびっくりして、凪沙と紅音を見た。

紅音の実家のことは、みんな知っていて当然伊織のことも知っている。
「伊織くん、元気?
犬系男子だもんね!可愛いし…!」
「今は犬じゃないわよ!
悪魔……てか、狂犬ね…!」
「狂犬……?」
「そ。する事が異常で、狂ってるのよ……」
「紅音、そこまで言わなくても……」
「だって、そうでしょ?凪沙、ほんとは息苦しいんじゃないの?伊織の束縛」

「え━━━?」
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