愛され、囲われ、堕ちていく
伊織は、人と喧嘩することが好きだ。

だからいつもまるで遊んでいるように、楽しそうに相手をなぶる。

その伊織に“笑顔”がない━━━━

その表情に、ここにいる全員が驚愕している。
それもそのはず、伊織の目の前で凪沙が一政の仲間に捕まり、今首にナイフを突きつけられているから。

「凪を…離せ…」
凄まじい視線が、凪沙を捕まえている男にそそがれている。
あまりの恐ろしさに凪沙でさえも、恐怖でびくびくしている。

「おい浅野、今すぐに全員連れて退け!
じゃないと、取り返しがつかなくなるぞ!」
臣平が一政に言い放った!
「あ?人質をいるのは、こっちだぞ!」

「死ぬぞ!」
「は?」
「おそらく全員、いや…確実に死ぬ…!」
「何、言って━━━━」
「お前は!!」
「………」
「伊織の恐ろしさを、全然わかってない!
まだ、笑いながらならいいんだ。
でも、今の伊織に笑顔がない。
相手が死ぬまで終わらない」

HPのメンバー(凪沙以外)は、本当は前に一度だけ笑顔がない伊織を見たことがある。

それは、裕隆を殺した時だ。
あの時“いくら伊織でも、凪は渡さない”と言った裕隆をなぶり殺したのだ。
誰も、止められなかった。
裕隆が息をしなくなっても、なぶるのは終わらなくて最後はほんとに“コレ”が裕隆なのかもわからなくなる程だった。

「臣平、もう…おせーよ…!」
その瞬間、灰皿が凪沙にナイフを突きつけている男の手に当たった。

それからは、また惨劇現場化した。
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