愛され、囲われ、堕ちていく
「私、もうそろそろ仕事しちゃダメ?」
「………は?」
一気に伊織の雰囲気が黒く染まった。

「え……」
凪沙はまさかここまで不機嫌になるとは思わなくて、思わずその場で固まった。
ソファーからキッチンまで距離があるのに、凄い圧迫感だった。
「監禁…されたい?」
「え…それは、嫌!
ごめんね…もう、言わないから!」
煙草を咥えた伊織が、キッチンに入ってくる。

煙草の煙を含んだ伊織が顔を近づけ、凪沙にキスをした。
「んーー!
ゲホッ、ゲホッ…!!」
「次、そんな発言したら…監禁だからね…!」
「はぁはぁ…うん…ごめんね……」

そして朝食中。
「ごちそうさま、凪」
朝食を済ませた伊織が、また煙草を吸い始めた。
いつものように天井に吹いて、咥え煙草で凪沙の髪の毛や頬をツンツンして遊び始める。
「伊織、煙草最近吸いすぎだよ!」
「んーだって、なんかストレス溜まんだもん!」
「だからって…今日はその吸ってるので、終わりね!」
そう言って、残りの煙草が入った箱を取った。
そして立ち上がり、箱を抱きかかえるように持った。

「あーー!こらっ!凪!!」
当然、伊織の機嫌は悪くなる。
「いいの?こんなことして…!」
「だ、だって…私は伊織の身体を心配して……」
「ちょうだい!
凪が心配してくれるの嬉しいけど、それはそれなの」
伊織が手の平を出す。

なぜだろう。
微笑んでいるのに、恐ろしい……
結局その恐ろしさに負けて、伊織の手の平に箱を置いた。
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