愛され、囲われ、堕ちていく
凪沙のあまりの剣幕に、さすがの環奈も退いてしまう。
「早く!!!」

「凪~ただいま~!」
「嘘…帰ってきた……どうしよう…」
今度はオロオロしだした、凪沙。

「凪~!」
ガチャ━━━━━
「凪~どうし……は?」
「い、伊織、おかえり~」

一瞬だった。
ほんとに一瞬で、伊織を包む雰囲気が黒く染まった。

「お前等…なんで……ここにいる…?」
「伊織様!これには訳が…!!」
ガン━━━━!!!
伊織が壁を殴り、塗装が剥がれ落ちた。
「出ていけ……
ここは俺と凪の神聖な場所“聖域”だ。
この家に入れる人間は限られてんだよ!
HPのメンバーでさえも、入れる人間が限られてるんだから!」
そしてスマホを取り出した伊織は、敬太に連絡する。
「あ、敬太?
今すぐに家来て!」
数分後、敬太が入ってくる。

「どうしたの?伊織。
………って、コイツ等…」
「早く出せ!つまみ出すにも、触りたくもねぇ!」
「てか、なんでいんの?」
「知らねぇ」
「凪沙、なんでいれたの?こんなの伊織が怒るに決まってんだろ!?」
「ごめんなさい!だ、だって…メールが……」
敬太にまで責められ、更に凪沙はびくびく震える。
もう目は涙でいっぱいだ。
「は?メール?」
凪沙はメール画面を伊織と敬太に見せた。

「確かに、伊織からのメールだな」
「あぁ…でも、送ってねぇよ、こんなの……」
「え?じゃあ…誰?これ送ったの」
不思議そうな三人。
「ヤバいよ、環奈」
「まさか、お前等が…?
それが目的で、俺達を呼んだのかよ!?」
「あ…ごめんなさ━━━━━━」
敬太の言葉にビクッと身体を震わせる、環奈達。

パリーン━━━━━!
「キャッ…!!」
伊織が、持っていた自分のスマホを環奈に投げつけた。
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