俺の名前はジョンじゃない!
 空から降り注ぐ有害物質を含んでいるあろう太陽光線を全身に浴びて学校へ向かう俺達。


 ……皮膚ガンとかになったら誰に訴えたらいいんだろうか?


 そんなどうでもいい事を考えながら歩いている俺の隣をトコトコと着いてくる美咲。俺よりも二〇センチほど低い美咲では俺の歩幅に合わせるのは大変な事だろう。

「ジョン、ストップっ」
「……」
「無言で反抗とはいい度胸だよ。そこにお座りっ」

 小走りに俺の前に廻り込んで指を俺に突きつけて、そのまま下を指差す美咲。

 丸っきり犬扱いだな……しかし、天下の往来でお座りなんて出来るかって話だ。

 不満そうに唇を尖らせて眉を吊り上げる美咲の顔をじっと見つめ返すと、頬を赤く染めて恥ずかしそうに顔を逸らして俯いてしまった。

「わ、私の顔なんか……じっと見ないでよ」
「別にいいだろ? 毎日見ているが飽きのこない顔っていいよな」
「ど、どういう意味よっ」

 更に不満そうに唇を尖らせて唾を飛ばしそうな勢いで思いつく限りの罵詈雑言(ばりぞうごん)を俺に浴びせている美咲。

 と、言っても「バカ」だの「アホ」だの……子供が思いつくような事しか言わないのが可愛いのだがね。


 ……こういうところが飽きないんだよな。


 なんて言ったら絶対に怒られるだろうな。現に怒っているわけだし、余計な事は胸の中にしまっておこう。

「ほれ、学校遅れるぞ」

 苦笑しながら美咲の頭に手を置いて一足先に歩き出した俺のうしろで――
「むう……ジョンのアンポンタンっ。お座りったら、お座りなのっ」
 一瞬、顔を赤らめていた美咲が大声で喚きながら近づいてきた。

 今時、アンポンタンはないだろうって――。

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