君はどんな味がする？

食前酒

アストン国ーーー広大で豊かな土地のおかげで小麦や野菜がたくさん取れ、食料に困らない国として有名である。

アストン国のとある森の近くに大きな屋敷がある。そこがこの物語の舞台だ。

その大きな屋敷に住んでいるのは、この国で一番の名家であるラートリー家。食に関する大革命を起こしたことでこの国では有名だ。

百年ほど前、世界中で食糧難と呼ばれる時期があった。作物が思うように育たず、多くの人が飢えていた。そんな中、ラートリー家の当主たちは「悪魔の化身」と呼ばれて口にされなかったタコやジャガイモを調理し、人々に振る舞ったのだ。このおかげで人々は飢えから救われ、ラートリー家の名前が知れ渡ることとなる。

「ーーーって言うのがこの家の一番有名な歴史かな」

今夜のディナーのメインディッシュである子鹿のグリエを食べながら、ラートリー家時期当主であるアルフレッド・ラートリーは言った。アルフレッドの目の前には、赤いドレスを着たふくよかな女性が座り、おいしそうにケーキを食べている。アルフレッドの婚約者のエマ・キャンティだ。