【コミカライズ】結婚前日に「好き」と言った回数が見えるようになったので、王太子妃にはなりません!
 声を掛けられて振り向くと、壮年のシスターがいた。とても小柄な人で、ベンチの背もたれにすっぽりと体が隠れている。

「ありがとうございます。いただきます」

 キャロルは、今度はグラスに泉をくみ取って、ひといきに飲み干した。

「――ぷはっ! 生き返りましたわ」
「それはようございました、シザーリオ公爵令嬢キャロル様」
「わたくしをご存じなのですか?」
「存じておりますとも。昔の話になりますが、噛み木に噛まれて、この教会に運ばれてきたキャロル様に、泉をおかけして応急手当を施したのは、この私でございます。それから、毎日の礼拝のたびに、快癒なさいますようにと祈りを捧げておりました」
「まあ!」

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