不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「それで、週明けにその病院に行って、改めて検査を受けることになったよ」
『わかった。今、どこにいる? 帰ってる途中か?』
いつになく穏やかな声色で尋ねられ、また気が緩みそうになった。
やめてよ、こんなときにとびっきり優しい声なんて出さないで。
本当はすごく不安でたまらないから、今すぐ灯に会いたい……なんて、ワガママを言ってしまいそうになる。
「うん。今は、もうすぐ家につくところ」
『了解。じゃあ、これから俺も家に戻る』
だけど次の瞬間、返ってきた言葉に私は自分の耳を疑った。
「え? 家に戻るって、商談があるんじゃ──」
『もう終わらせた。早く検診の結果を聞きたくて、最短で契約を取りつけた』
そう答えた灯の後ろで秘書の園宮さんが、『いつになく辣腕ぶりを発揮されてました』なんて面白そうにボヤいたのが聞こえた。
『とりあえず牡丹はこのまま真っすぐ家に帰って休んでろ。すぐに行くから、お腹の子とふたりで待ってて』
それだけ言うと灯は電話を切ってしまった。
私は通話の切れた携帯電話をしばらく呆然と見つめたあと、不意に押し寄せてきたときめきに頬を赤く染めた。