不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
ふたりで待っててって……。お腹の子のことも、ちゃんと人数に入れてくれているのが、些細なことだけど嬉しかった。
何より、検診結果を聞くために大切な商談を最短で済ませたって……。灯が優秀だからこそできる力技だろうけど、それだけ自分を大切に思ってくれているんだということを改めて感じて、ときめかずにはいられなかった。
「あなたのパパは、あなたのこともママのことも、すごく大切に考えてくれているみたい」
囁くように言った私は、ふっくらとしてきたお腹に手を当てた。
ついさっきまで不安でたまらなかったのに、今は幸福感で胸が満たされている。
トクン、トクンと鳴る鼓動はくすぐったい。
再び家に向かって歩き出した足は、羽根のように軽かった。
「牡丹!」
「あ、灯……おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
それから三十分後、宣言通りに仕事を切り上げた灯が家に帰ってきた。
ほんの少し髪が乱れているのを見たら、急いで帰ってきてくれたんだということがわかって、また胸がキュンと甘く鳴る。
「仕事は本当に大丈夫だったの?」
「ああ、問題ない。園宮には何かあれば連絡するように言ってあるし、今は牡丹とお腹の子のことが一番大事だから」
当たり前みたいに言われて、思わず頬が熱くなった。
灯に想いを告げられてからというもの、灯はストッパーが壊れたみたいにこうして気持ちをストレートに伝えてくるようになった。
そういう灯に私は一向に慣れなくて、言われるたびにドキドキしてしまって落ち着かない。
本当は灯が過保護で独占欲が強いことを知って、いつも心がくすぐったかった。